巡礼
右肩が重い。
重いっちゅうか凝ってるというか、何というか違和感を感じ気になって眠れない事もある。
仕事柄パソコンに向かっているので姿勢の問題で肩が凝っているのかとも思ったがどうも違う。
もしかして何か悪いモンが肩に乗っかっているのかもしれんと思い出した。
そういえば最近なんともパッとしない。
思考もネガティブになりがちでドローンとした空気の中で生きているような、何をするにも心から集中できないなと思っていた。
悪霊である。
オバケ信仰はないが、こう思い出したら悪霊が乗っかってる気がしてならず、自転車乗ってる時も車が突撃してくるんじゃないかなど訳のわからん気持ちになってきた。
そこで俺はどっかパワースポット的なとこに行くべきだと思うようになってきた。
そんな話をしていたら嫁さんから
「代々木八幡がすごいパワースポットらしいよ」との話を聞いた。
東京生活25年以上になる。代々木八幡などはチャリで100回は素通りしており、その存在は知っていたがお参りしてみようなどと思った事が一度も無かった。
これはタイミングだなと思い、末っ子の保育園送りがてら今日お参りに行って来た。
鳥居をくぐり左に曲がると本殿が見えた。
近づくと朝にも関わらず数人がお参りの列を作っていた。
俺も並び順番が来たので帽子を取り100円残して残りの小銭を賽銭箱に放り込みお参りした。
前の人はお参りが済むと右側に進んだので俺もそれにならった。
でかい木箱があり、その前にも賽銭箱があったのでお参りした。
前の人はでかい木箱のお参りが済むとさらに右に行ったので俺もそれにならった。
そこにはおいなりさんがいた。
ちっさな狐の置物が100体くらいおり、地蔵や赤い旗などから醸し出される妙なパワーに更に背筋が伸びる。
小さな鏡に向かいお参りした。
残しておいた100円でおみくじを引く。
小吉 運気容易に開けず口舌多し 急がず時の到るを待ちて事を行え
遺跡などを覗いて家に帰った。
神聖な気持ちの俺は亡き父母の写真周り、亡き愛猫ミックの骨壷などを掃除した。
その時だ。俺は異変に気付いた。
前に買った豪徳寺の招き猫の手が折れとるやないか!!!!!
子供のいたずらでミックの遺影前に飾られた招き猫はなんども床に落っこちていた。
何処かのタイミングで手が折れてしまったのだろう。
亡き父母の遺影も埃まみれだった。
俺はそれらに気づかず今までいた事を深く深く反省した。
宗教的な云々とかではなく、そのちょっとした事、父母の写真のほこりやら、招き猫の手やらに気づかないほど視野が狭くなっておったのか!!!!!!
そんなに余裕が無かったのか!!!!!
仏コーナーを綺麗にふきあげ俺は手の折れてしまった招き猫をリュックにしまい豪徳寺へ向かった。
ありがとうございました。
手が折れていた事に気づかずすんませんでした。
と心でつぶやき今村家の招き猫二体を返した。
そして今までのやつよりワンサイズ大きな招き猫を二体買った。
どんどん進化させ最終的には一番デカイのを買うイメージでいる。
豪徳寺でもおみくじを引いた。
吉 おいおいよきことがかさなる 天上の時節まつごとし
たとえば竜のふちに隠れて天上のじせつを待つ如し心をおとなしく持ち、先祖の祭おこたるな
神様やら仏様やらってのは自分の心にいるものだと思っている。
代々木八幡のおみくじと豪徳寺のおみくじを眺めているとどちらにも共通する事が書いてあった。
焦るな。待て。今は粛々とやるべき事をやれ。
俺はそれらのおみくじのメッセージをこう解釈した。
その瞬間力がスッと抜けた気がした。
スッと抜けた気がしたが、右肩の痛みが消える事は無かった。
別に欲しい本があった訳ではないが何となく入った。
パッと目に入ったのは、親父の看取り後に読んだエリザベス・キューブラー・ロスのライフ・レッスン。誰かに貸したままで手元に無かったのだがまた読みたくなって手にとった。
そして100円コーナーでビートたけし「バカ論」を手に取りレジに並んだ時、横の棚にでかいバージョンの「火の鳥鳳凰編」が目に入りそれも手に取った。
必要なタイミングに必要なもんが見えて、必要なもんが手に入るんだなあ、などと思いながら神聖な気持ちの俺は晴天の世田谷区をママチャリでのんびりと帰った。
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今村竜也
シンガーソングライター。
五児の父。
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